有給休暇はなぜ取れないか?(中編)

有給休暇取得を阻害していると思われる「義務を果たさずに権利ばかり主張するな!」という使用者(会社)側の論理について考えてみます。この論理は、法律やルールを無視した根拠のないワガママなんでしょうか?


前回みてきたように、労働基準法上、労働者が有給休暇取得の「権利(時季指定権)」を行使するのに、果たすべき「義務」というのはありません。むしろ、「義務」があるのは会社の方です。労働者が「休みたい」と言ったら、休ませる「義務」があるのです。

では、使用者が「義務を果たさずに権利ばかり主張するな!」と言うのは、いったい何のコトなのでしょう?。この言葉から想像すると、使用者側には「労働者に果たしてもらいたい義務」があるようです。そして、義務を果たすように言う「権利」も持っているようです。すくなくとも、使用者はそう考えています。

そもそも有給休暇における「休暇」という言葉は、「労働義務を免除された日」という意味です。とすれば、労働者になんらかの義務があるとすれば、それは「労働義務がある日」すなわち「出勤日」に関する「義務」という事になります。

そこで思い当たるのが、「指揮命令権」に関する「権利」と「義務」です。「指揮命令権」については、インターネットで検索すると、以下のような説明がありました。

雇用関係で発生する権利。使用者が取得するもので、労働者は指揮命令に従う義務を負う。
(デジタル用語辞典)


「出勤日」について、使用者には指揮命令権という「権利」があり、労働者には指揮命令に従う「義務」がある・・・という事になりますね。あくまでも「出勤日」に関する「権利」「義務」なので、本来、有給休暇とは関係のない話です。けれども、念のために図にしましょう。


指揮命令 

今回も、とてもシンプルな図になりました。誤解のないように繰り返しますが、この「権利」「義務」は、図に書いた通り、あくまでも「出勤日」に関する「権利」「義務」です。

けれども、たとえば休日の前後の「出勤日」において、「休暇前に、休暇中の仕事を前倒しにダンドリするよう指揮・命令する権利」「休暇中、他の従業員が代わりに仕事ができるように(事前の出勤日に)引き継ぎしておくよう指揮・命令する権利」「休暇後に、休暇中できなかった仕事をフォローするよう指揮・命令する権利」も含まれています。従業員のダレかが休んでも、会社の業務は流れていくワケですから。

お気づきでしょうか?。前回の有給休暇に関する「権利」「義務」の図と、今回の業務に関する「権利」「義務」の図、まったく別の根拠に基づき別の日を対象とする「権利」「義務」ですが、なんだか似てるような気がしませんか?。

わかりやすいように並べてみました。次のようになります。

両方の義務

有給休暇に関する「権利」「義務」、業務に関する「権利」「義務」、1つ1つは図に書くまでも無いくらいに、とてもシンプルな関係ですが、2つを並べてみると気づく事があります。

(1)2組の「権利」と「義務」は、根拠も対象とする日も異なる、まったく別の「権利」と「義務」である。

(2)労働者と使用者は、根拠を異にする「権利」と「義務」を、1つづつ持っている。

(3)根拠も対象とする日も異なる、まったく別の「権利」と「義務」であるにも関わらず、2組の「権利」と「義務」は同時に発生する事がある。たとえば、有給休暇が取得することが決まった瞬間、休暇前後の出勤日に「事前のダンドリ」「休暇中業務の引き継ぎ」「事後のフォロー」の業務に関する指揮命令の「権利」と「義務」が発生する。

こういった事を踏まえて、使用者側の論理、「義務を果たさずに権利ばかり主張するな!」について考えてみましょう。

使用者の論理が、労働者・使用者が1つづつ持っている「権利」と「義務」について、「指揮命令に従う義務」を果たしていないから「有給の時季を指定する権利」を行使できないのだ・・・という意味であるなら、違います。前回指摘した通り、労基法上「有給の時季を指定する権利」を行使するために、労働者が負うべき「義務」はありません。

しかし、だからといって、労働者は、労基法に定める「有給休暇の時季指定権」を行使する際に、「事前のダンドリ」「休暇中業務の引き継ぎ」「事後のフォロー」に関する会社の指揮命令を、まったく無視していいワケではありません。 指揮命令権が消滅するワケではないのです。

と、いうことで、「義務を果たさずに権利ばかり主張するな!」という使用者の論理は、「指揮命令に従う義務を果たしていなければ、有給休暇の時季指定権が発生しない」という意味なら間違いです。

けれども、「労働者は、有給休暇の時季指定権もあるけれど、使用者の指揮命令に従う義務もあるんだぞ(指揮命令を無視していいワケではないんだぞ)」という意味であれば、あながち間違いとはいえないでしょう。

有給休暇に関する「権利」「義務」と、指揮命令に関する「権利」「義務」は、時季的に同時に発生するだけで、根拠も対象とする日も違うので、本来混ぜる事のできない「権利」「義務」といえます。

以上、使用者の「義務を果たさずに権利ばかり主張するな!」という論理について考えてみました。次回は、「有給休暇はなぜ取れないか?(完結編)」として、対策について考えてみたいと思います。

(完結編 http://rodojikan.airyplace.jp/2014/08/blog-post_16.html)

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