有給休暇を取得した労働者に対する評価について(中編)

前回まで2回、有給休暇を取得した労働者に対する評価について書いてきました( 予告編はコチラ 前篇はコチラ )。

前篇で、「有給休暇前後の出勤日について、勤務評価を“低い”とすることは、かならずしも労働基準法136条に反しない」・・・と私なりに結論を出しましたが、評価の対象となった“バツ山氏”から
“評価の対象となっているのは“有給休暇前後の出勤日”とはいえ、有給休暇日と密接に関係がある日であり、“低い”という勤務評価は賃金や昇進に影響がでる不利益である事を理由に、労働基準法136条に反するのではないか?”といった観点から、「評価対象からハズすべきだ!!」・・・という意見がだされました。

念のため、ここでいう評価とは、休日・休暇中の業務の進行に支障が起きないように、休日・休暇をはさんだ前後の出勤日において“事前の準備”“事後のフォロー”“休日・休暇中に稼働している部署等への引き継ぎ・連絡等”を行う業務に対する評価の事です。

ちょっと聞いた感じでは、バツ山氏の意見は合理的な感じもしないではありません。有給休暇に密接に関連する日を評価の対象にすれば、恣意的に悪い評価をつけて有給休暇の取得を抑制しようとするブラック企業が出てくるかも知れませんしね。

で、今回も結論から先に書きます。

私の考えでは、それでも「有給休暇前後の出勤日について、評価の対象からハズしてはいけない」。言葉を換えれば、「有給休暇前後の出勤日は、必ず適正に評価しなければいけない」です。

以下、その理由についてまとめてみます。

ここで、考えるにあたっては、もう一つシンプルな例として、“マル川氏”に登場してもらいます。

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<シンプルな例2>卸売業に勤めるマル川氏の評価について

バツ山氏と同じA社(卸売業)に勤めるマル川氏の仕事も、小売店の注文を取りまとめ、商品を手配し、供給のダンドリをつける仕事です(バツ山氏とまったく同じです)。ただし、仕事の内容はバツ山氏と正反対で非の打ちどころがなく、誰から見ても文句なしに“最高・最善”と評価される完璧な仕事ぶりです。休日・休暇中に起こりうるであろう“ありとあらゆる事態”を完全に予測し、すべて事前に手を打ってあります。ごくまれに不測の事態が生じたときでも、提携先の倉庫会社・運送会社に見事な根回しをしてあるので、業務に対する支障は“ゼロ”です。

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まず、A社は本来「良いものは良い、悪いものは悪い」と評価する会社ですので、原則通りバツ山氏とマル川氏を評価した例を表にしました。

例1

しかし、有給休暇取得に密接に関連のある日の評価を“低い”とされる事に納得がいかないバツ山氏の意見を取り入れ、有給休暇前後の出勤日を評価の対象から外すと、次表のようになります。

例2

コレで、バツ山氏には有給休暇前後の出勤日について“低い=不利益”という評価をつけられることがなくなりました。

しかし、マル川氏については、どうでしょう?。そのままで評価されれば“高い”という評価をつけられるハズであるのにも関わらず、有給休暇を取得した場合は評価から外されるのです。

“最高・最善”という勤務内容は、当然、人並み外れた努力の賜物です。神経をすり減らし、現場や提携先に何度も足を運び、頭を下げ、歯を食いしばり、血の汗を流し、涙を拭かずに頑張って初めて実現するのです。“有給休暇を取得したら、その血のにじむような努力が評価されない”というのは、マル川氏にとって不利益ではありませんか?。有給休暇を取ればとるほど、努力が評価されない日が増えるのです。

それでは「低い評価をつける時だけ評価の対象からハズす」というのはいかがでしょうか?。その場合、次のような表になります。

例3

この場合、バツ山氏には“低い”という不利な評価がつかず、マル川氏には“高い”と良い評価がつきます。

しかし、ご覧になればわかるように、休日前後の出勤日と有給休暇前後の出勤日、2人の勤務内容はそれぞれまったく変わらないのに、休日の場合は2人の点数差が“10点”あるにもかかわらず有給休暇の場合の2人の点数差は“5点”しかありません。これは、マル川氏にとって、“有給休暇を取得したら、その前後の出勤日の評価が、対バツ山氏比で半分になる”という意味になります。これはマル川氏にとって明らかに不利益だと思うんですが、いかがでしょうか?。

結局“どんな場合もありのままに(適正に)評価する”というのが一番妥当だ・・・という事になります。

以上が「有給休暇前後の出勤日の業務について、評価の対象からハズしてはいけない」と私が考える理由です。

ところが、実務的に考えると、この“ありのままに(適正に)評価する”というのが、とても難しいのです。(そもそも、今回考えた例はシンプルすぎるし、実際の業務は休日・休暇に対する備えだけじゃないしね)

次回、“有給休暇を取得した労働者に対する評価について(完結編)”では、実際に起こった労務トラブル事例などを紹介しながら、そのアタリについて考えてみたいと思います。あわせて、有給取得率をあげる取り組みについても考えたいと思います(あくまで予定)。

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