変形労働時間制の割増賃金は?・・・を考えるときの、最初の第一歩

ごぶさたです。

過去に、変形労働時間制を採用している場合の割増賃金について、何度か書いてきました。


塗りつぶして確認する、割増賃金が必要な時間外労働【1か月単位変形労働時間制】

法定労働時間の総枠に収まっていても、割増賃金を支払わなければいけないケースがある!【1か月単位変形労働時間制】

実務を担当している人にとって、「変形労働時間制の割増賃金の計算」は、理解しにくいテーマのようで、よく質問されることがあります。

「なにがわからないか」「どうわからないか」・・・という話を聞いていて、ふと、理解されていないというか、認識が薄いのではないかと感じるポイントがあるので、「最初の第一歩」として書き留めて置くことにしました。

割増賃金を支払う「3つのパターン」


労働基準法には、割増賃金を支払わなければならない「3つのパターン」が規定されています。

  1. 時間外割増
  2. 休日割増
  3. 深夜割増
このうち、「休日割増」と「深夜割増」については、カンタンです。

労働義務が設定されていない法定休日に労働させたときに払うのが「休日割増」です。

深夜の時間帯(午後10時~午前5時)に労働させたときに払うのが「深夜割増」です。

では、「時間外割増」は?

法定労働時間(原則:40時間/1週間、8時間/1日)を超えて労働させたときに払うのが「時間外割増」でしょうか? 実は、この理解は、間違っています(少なくとも、不正確です)

条文を確認してみましょう。

(時間外、休日及び深夜の割増賃金)
第三十七条  使用者が、第三十三条又は前条第一項の規定により労働時間を延長し、又は休日に労働させた場合においては、その時間又はその日の労働については、通常の労働時間又は労働日の賃金の計算額の二割五分以上五割以下の範囲内でそれぞれ政令で定める率以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。ただし、当該延長して労働させた時間が一箇月について六十時間を超えた場合においては、その超えた時間の労働については、通常の労働時間の賃金の計算額の五割以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。
(労働基準法 第37条より 黄色マーカーは筆者)

カンタンに書くと、「法定労働時間を超えて労働させた場合に割増賃金を払わなければならない」というのではなく、「労基法33条、36条第1項の規定により法定労働時間を超えて労働させた場合に割増賃金を払わなければならない」ということです。

労基法33条というのは、「災害等による臨時の必要がある場合の時間外労働等」のことでした。行政官庁の許可を受ければ法定労働時間を超えて労働させることができるのでした。

労基法36条第1項というのは、「36協定による時間外労働」のことでした。適正に協定を締結し行政官庁に届出れば法定労働時間を超えて労働させることができるのでした。

労働基準法の時間外割増は、「労基法33条」と「労基法36条第1項」の2つのパターンで法定労働時間を超えた場合に発生するのです。

変形労働時間制の根拠条文は?


ここで、変形労働時間制について、根拠となる条文を確認してみましょう。


  • 1か月単位の変形労働時間制 : 第32条の2
  • 1年単位の変形労働時間制 : 第32条の4(第32条の4の2)
  • 1週間単位の非定型的変形制 : 第32条の5


ざっくりいって、「第32条の○」が変形労働時間制の根拠条文です。「労基法33条」でもなければ、「労基法36条第1項」でもありません。

以上のことから、「労基法 第32条の○」の規定により適正に設定された変形労働時間(所定労働時間)については、結果として、たとえ1週間40時間を超えていても、1日8時間を超えていても、時間外割増賃金は発生しないということになります。
(深夜割増は発生することがあります。念のため)

まとめ

変形労働時間制の時間外割増賃金を計算するときには、まず「変形労働時間制が適正に設定されているか」を確認します。そのあと、「時間外労働について割増が必要かどうか」を確認していくことになります。
(くどいようですが、深夜割増は発生することがあります。念のため)

誤解をおそれずに単純にいえば、変形労働時間制とは、法律に基づいて所定労働時間を変形する制度です。「所定労働時間にかかる割増賃金は、深夜割増だけ」と考えればいいのではないかと思います。

以上、「まちがい」「かんちがい」「誤解を招きやすい表現」等あれば、やさしくご指摘いただければ幸いです。


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