副業・兼業と就業時間 徹底チェック!【「時の流れに従って計算」原則】(2)



 労働時間は「時の流れに従って計算する」という原則があります。

 たとえば、次のような例を考えてみてください。


 Aさんは、甲社と乙社、それぞれとの間に労働契約を締結して働いています。具体的には、まず甲社に出勤して勤務して、引き続き乙社で勤務するというケースです。今回は、労働時間だけに関する話題のため、話をシンプルにするために、「休憩時間」や「甲社から乙社へ移動する時間」については考えません。

 もし、労働時間を時の流れに従って計算するなら、割増賃金が必要な法定時間外労働は、下図のとおりになるはずです。

労働時間を時の流れに従って計算する例

 ここで、「時の流れに従って計算する」とは、シンプルに時の流れに従って実労働時間を積算していく方法です。この場合労働基準法では、甲社の実労働時間も乙社の実労働時間も、通算して取扱うことになっています(労働基準局長通達(昭和23年5月14日基発第769号))。通算した実労働時間が法定労働時間(1日8時間)を超えるに至る時点以降の労働においては、その時点において労働者を使用する使用者に割増賃金の支払義務が発生するという考え方です。

 労働基準法には、次のように規定されています。

使用者が、第33条又は前条第1項の規定により労働時間を延長し、又は休日に労働させた場合においては、その時間又はその日の労働については、通常の労働時間又は労働日の賃金の計算額の二割五分以上五割以下の範囲内でそれぞれ政令で定める率以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。
(労働基準法第37条 第1項)

 条文中の割増賃金を支払わなければならない「その時間」とは、今回の例の場合、「法定労働時間(8時間)を超えた時点で労働している時間(つまり乙社の時間)だ・・・というワケです。

 今回の例だと、乙社が36協定を締結した上で、時間外労働に対する割増賃金を支払うことになりますね。「時の流れに従って計算」する原則では、早い時間に労働者を使用する使用者が法定労働時間以内の労働を命じる場合、遅い時間に労働者を使用する使用者が、基本的に割増賃金を支払うカタチになります。

 でも、この取扱にはいろいろな問題があります。考えてみてください。もともとAさんと乙社が先に労働契約を締結していたかも知れません。それなのに、あとから契約した甲社の就業時間によって、割増賃金を払わなければならないとしたら、乙社としては納得いかないのではないですか?

 今回、「副業・兼業の促進に関するガイドラインQ&A」で、自社、副業・兼業先の両方で雇用されている場合の、労働基準法における労働時間等の規定の適用がどうなるか、整理されました。

 で、結論です。副業・兼業の場合、単純に「時の流れに従って計算」するわけではありません。「労働契約締結時期」「労働契約上の労働時間」「実労働時間」「労働させた時間帯(どちらが先か後か)」などにもとづき判断される「自社で発生した法定外労働時間」について「36協定の締結義務と時間外割増賃金の支払い義務」が生じます。

 ガイドラインに「就業時間の取扱ルールが分かりにくい」とみずから書くだけあって、結構ややっこしい判断になります。

 Q&Aの1ページ目を確認してみてください。

「副業・兼業の促進に関するガイドライン」 Q&A

 どうでしょうか。ややっこしいでしょう?

 Q&Aの考え方だと、「早い時間に労働者を使用する使用者(今回の例では甲社)が法定労働時間以内の労働を命じる場合」でも、割増賃金を支払わなければならないケースがでてきます

 次回は、このQ&Aに書かれた「自社、副業・兼業先の両方で雇用されている場合の、労働基準法における労働時間等の規定の適用」について確認していきたいと思います。

前回のエントリー
副業・兼業と就業時間 徹底チェック!【就業時間の取扱ルールについて】

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