副業・兼業と就業時間 徹底チェック!【実例で確認!5つのルール】(5)



 今日は「ガイドラインQ&A 事例(2)」を中心に確認します。



 さっそく、「実例(2)」と「答」を確認しましょう。

(2)甲事業主と「所定労働日は月曜日から金曜日、所定労働時間8時間」を内容とする労働契約を締結している労働者が、乙事業主と新たに「所定労働日は土曜日、所定労働時間5時間」を内容とする労働契約を締結し、それぞれの労働契約のとおりに労働した場合。
副業・兼業の促進に関するガイドライン Q&Aより)

 この例は、第3回(3)でまとめた5つのルールの中の「ルール4」の参照実例です。答えは次のように書かれています。

(答)
  1. 甲事業場での1日の労働時間は8時間であり、月曜から金曜までの5日間労働した場合、労働時間は40時間となり、法定労働時間内の労働であるため、労働契約のとおりさせた場合、甲事業主に割増賃金の支払義務はありません。 
  2. 日曜日から土曜日の暦週で考えると、甲事業場で労働契約のとおり労働した場合、労働時間が週の法定労働時間に達しているため土曜の労働は全て法定時間外労働となります。 
  3. よって、乙事業場では時間外労働に関する労使協定の締結・届出がなければ当該労働者を労働させることはできず、乙事業場で土曜日に労働した5時間は、法定時間外労働となるため、乙事業主は5時間の労働について、割増賃金の支払い義務を負います。 
副業・兼業の促進に関するガイドライン Q&Aより)



< 確認事項 >

1.「労働契約上の労働時間」と「実労働時間」

今回も、まず最初に「労働契約上の労働時間」と「実労働時間」について確認していきましょう。

 (答)にも書かれているように、「甲事業場で労働契約のとおり」働かせた場合、土曜日の労働が全て法定時間外労働になります。したがって、甲事業場で働かせた時間が「労働契約より少なかった」場合は、次のようになるでしょう。



 乙事業場の「労働契約上の労働時間」の内、最初の1時間は法定労働時間を超えていないことから「法定時間内労働」となるので、時間外割増賃金は不要となります。

2.乙事業場が日曜日に労働させた場合。

ガイドラインQ&Aの例で乙事業場での労働は、週の一番最後(土曜日)です。では、乙事業場の労働が週の最初の日曜日だったらどうでしょうか。


 この場合、乙事業場が5時間の労働をさせるのは週の第1日目ですから、乙事業場の労働が終わった時点で甲事業場の実労働時間は「0時間」です。

 もし、「労働時間の計算は時の流れに従って計算する原則」に従って労働時間を足していくとするなら、甲事業場での労働時間である金曜日の3時間目に週40時間に達するわけですが、この場合でもやはり、乙事業場の5時間が「法定時間外労働」になります。

 もういちど、「5つのルール」に書かれている「ルール4」を確認してみてください。

ルール その4
通算により法定労働時間を超えることとなる所定労働時間を定めた労働契約を時間的に後から締結した使用者が、労働基準法上の義務(36協定の締結と実際に働かせた場合の割増賃金の支払など)を負う。
副業・兼業と就業時間 徹底チェック!【取扱い 5つのルール】(3)より)

 甲事業場が「あらかじめ」月曜日から金曜日・各8時間の所定労働時間を定めている週に、乙事業場が法定労働時間を超えることとなる所定労働時間を定めた労働契約を「時間的に後から締結」することになるので、乙事業場の5時間が36協定の締結と割増賃金の対象となるのです。

 判断は、「実労働時間」が先か後かではなく、「法定労働時間を超えることとなる所定労働時間を定めた労働契約の締結時期」が先か後か・・・で判断します。

3.乙事業場の労働が、甲事業場の労働の間にある例

「法定労働時間を超えることとなる所定労働時間を定めた労働契約の締結時期」が先か後か・・・で判断するわけですから、乙事業場の労働が甲事業場の労働の間にあっても同じことでしょう。


 先に契約していた甲事業場の「労働契約上の労働時間」が週40時間に達しているので、後から契約する乙事業場の5時間について、36協定の締結・届出と割増賃金の支払が必要になります。

4.乙事業場の労働が甲事業場の労働の間にあり、労働者が甲事業場での労働を1日欠勤した場合

最初に確認したとおり、割増賃金の支払は実労働時間で判断します。たとえば、月曜日に労働者が甲事業場の労働欠勤した場合、時間外労働はどうなるんでしょうか?


 この場合、実労働時間が法定労働時間(週40時間)を超えないので、乙事業場は時間外割増賃金の支払い義務はないでしょう。

5.甲事業場が、日曜日の労働を就業規則の定めに従い土曜日に振り替えた場合

下図のように、甲事業場が就業規則(または労働契約)にもとづいて、日曜日の勤務を土曜日に振り替えた場合は、どのように判断したらいいのでしょうか?


 もういちど、「5つのルール」にかかれている「ルール4」を確認してみましょう。

ルール その4
通算により法定労働時間を超えることとなる所定労働時間を定めた労働契約を時間的に後から締結した使用者が、労働基準法上の義務(36協定の締結と実際に働かせた場合の割増賃金の支払など)を負う。
副業・兼業と就業時間 徹底チェック!【取扱い 5つのルール】(3)より) 

 ひとつの考え方として、先に労働契約を締結していた甲事業場の所定労働時間は、当初からの設定(週40時間)のままで変更されたわけではありません。労働する日が移動するだけです。しかも、労働する日が移動する(振り替える)ことは、当初からの労働契約に盛り込まれています。

 こう考えると、乙事業場が割増賃金を支払うべきだ・・・という考えかたもあるでしょう。

 けれども、ちょっと待って下さい。本当にその考え方でいいんでしょうか?

 「労働日を振り替える」とは、具体的にどういうことをおこなうのか、考えてみます。

「休日の振替」とは、休日と定められた日を労働日とし、そのかわりに他の労働日を休日とすることである。
(労働基準法(コンメンタール) 厚生労働省労働基準局編)

 「休日」の振替も「労働日」の振替も、基本的に同じことです(休日に着目した表現か、労働日に着目した表現か、というだけの違いと考えられます)。

 この振替の定義を、もうすこしくわしく理屈っぽく言い換えれば、「トータルの所定労働時間が変化しないように、労働日の所定労働時間を取り消し、休日であった日に新しく所定労働時間を設定する」ことと考えることができるのではないですか?

 この考え方だと、甲事業場がおこなう振替(新しい所定労働時間の設定)の時期が、乙事業場の労働契約締結時期より「後」になるので、甲事業場の土曜日の勤務の内5時間分が時間外労働になるという考え方もできます。

 ルール4に書かれた「所定労働時間を定めた労働契約」に示される「所定労働時間」が、単に○時間(たとえば週40時間)という時間(時の長さ)のみを表すのであれば、その時間の長さを締結した時期(今回の例では、甲が最初に労働契約を締結した時期)になるのでしょうが、労働基準法の規定では、労働契約の内容として「始業・終業時刻」「休憩」「休日」を定めることを要求していて、「始業・終業時刻」の間の時間から「休憩」を除いた時間が「1日の所定労働時間」、1週間の休日を除いた労働日の総労働時間が「1週間の所定労働時間」となることを考えると、このケースでは「所定労働時間(の中身)が更新されている」と考えることができます。つまり、後から所定労働時間を更新した甲が、割増賃金を支払うことが妥当だと思います。
(あらかじめ就業規則に振替の規定があっても、それは、「振り替える」ということを規定しているだけであって、具体的な労働日・所定労働時間を、あらかじめ決めたわけではありませんね)

まとめ

最後の「5.甲事業場が、日曜日の労働を就業規則の定めに従い土曜日に振り替えた場合」については、見解がわかれるかも知れません。

 「副業・兼業を認めない」という会社であれば、あたりまえのように労働日を振り替えていたところが、「副業・兼業を認める」ということになると、いままで想定していなかった問題が起こるのではないかと、すこし心配しています。

 実際に「副業・兼業」を認める場合、実務的には今回のケースも含めて具体的な取扱のルールを労使でキチンと話し合い確認し合い、法違反がないかどうかについては所轄労働基準監督署に相談されることをオススメします。
(今回に限らず、このブログの記事は、すべて私見です)

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