副業・兼業と就業時間 徹底チェック!【実例で確認!5つのルール】(4)



 今日は「ガイドラインQ&A 事例(1)」を中心に「新たに契約するパターン」を確認します。



 このブログのコンセプトは、「重箱のスミをザックリとつっつく」というコトになっていますので、副業・兼業を許可した現場での「就業時間の取扱ルール」について、すこしくわしく見ていきたいと思います。

 まず、「実例(1)」と「答」を確認しましょう。

< ガイドラインの実例と答 >

(1) 甲事業主と「所定労働時間8時間」を内容とする労働契約を締結している労働者が、甲事業場における所定労働日と同一の日について、乙事業主と新たに「所定労働時間5時間」を内容とする労働契約を締結し、それぞれの労働契約のとおりに労働した場合。
副業・兼業の促進に関するガイドライン Q&Aより)

 この例は、前回まとめた5つのルールの中の「ルール4」の参照実例です。答えは次のように書かれています。

(答)
甲事業場の所定労働時間は8時間であり、法定労働時間内の労働であるため、所定労働時間労働させた場合、甲事業主に割増賃金の支払義務はありません。

甲事業場で労働契約のとおりに労働した場合、甲事業場での労働時間が法定労働時間に達しているため、それに加え乙事業場で労働する時間は、全て法定時間外労働時間となります。

よって、乙事業場では時間外労働に関する労使協定の締結・届出がなければ当該労働者を労働させることはできず、乙事業場で労働した5時間は法定時間外労働であるため、乙事業主はその労働について、割増賃金の支払い義務を負います。
副業・兼業の促進に関するガイドライン Q&Aより)



< 確認事項 >

1.「労働契約上の労働時間」と「実労働時間」

ガイドライン Q&A」ではサラッと書いてありますが、「実労働時間」が法定時間外であるときに、割増賃金の支払い義務が生じます。

 したがって、「答」を「労働契約上の労働時間」と「実労働時間」に注目して整理すると、次のようになるでしょう。


  1. 新たに設定しようとする「労働契約上の労働時間」が他事業場の「労働契約上の労働時間」とあわせて法定労働時間を超える場合は、超える部分について「新たに設定しようとする事業主」が36協定を締結して届出をおこなう。
  2. 36協定を締結・届出した法定時間外労働の範囲内でおこなった「実労働時間」に対して割増賃金を支払う。


 具体的に、労働者が1時間遅刻した次の図のようなケースでは、乙事業所でおこなう労働時間5時間のうち、4時間が法定時間外労働として割増賃金が必要になるでしょう。



 つまり、副業・兼業を認めようとする場合は、他事業場の「労働契約上の労働時間」「実労働時間」を日々確認する必要があります。
(もちろん、管理が面倒なので、甲事業場の実労働時間にかかわらず乙事業場では常に割増賃金を支払う・・・という運用もアリでしょう)

2.甲事業場で、変形労働時間制を採用していた場合

たとえば、甲事業場で変形労働時間制を採用していて、1日の「労働契約上の労働時間」が12時間の日と4時間の日があったとします。この場合は、どのように取り扱ったら良いのでしょうか?

 よく誤解があるのですが、変形労働時間制を取った場合でも「1週40時間、1日8時間」という法定労働時間の原則がすべて適用されなくなるのではありません。法に定められた手続きをとったときに、「特定の週、特定の日」について法定労働時間を超えて働かせることができるというコトが定められています。

 具体的な例を考えます。

 甲事業場が「1週間単位の変形労働時間制」を採用していたとします。所定労働日は月曜から金曜の5日間で、「労働契約上の労働時間」は、月曜~水曜8時間、木曜4時間、金曜12時間です。この場合、新たに乙事業場が木曜に4時間の「労働契約上の労働時間」を設定した場合は、どうなるでしょうか?



 図に示すように、木曜日の1日だけを見ると、甲・乙事業場の「労働契約上の労働時間」の合計は8時間で、法定労働時間を超えていません。けれども、週の労働時間でみると、甲事業場の「労働契約上の労働時間」だけで40時間に達するので、新たに契約する乙事業場の「労働契約上の労働時間(4時間)」については、36協定を締結・届出が必要です。

 では、下図のように、甲事業場の「労働契約上の労働時間」が週32時間で設定された変形労働時間だとどうなるでしょうか?



 この場合、新たに契約する乙事業場の「労働契約上の労働時間(4時間)」を、月曜や木曜などの1日の法定労働時間(8時間)を超えない曜日に設定する場合は36協定の締結・届出の必要はないと考えられます。

 一方、火曜、水曜、金曜に設定する場合は、1日の法定労働時間(8時間)を超えるので、36協定の締結・届出の必要があります。

3.甲事業場と乙事業場の双方で変形労働時間制を採用する場合。

たとえば、甲事業場が週32時間の変形労働時間制を採用していた例で、新たに乙事業場と週4時間の労働契約を締結し、かつ、乙事業場でも変形労働時間制を採用したとしたらどうでしょうか?



 この場合、たとえば水曜や金曜に4時間の労働をさせたとします。甲・乙事業場の「労働契約上の労働時間」を通算しても週36時間ですから、週40時間の法定労働時間内に収まります。

 このような変形労働時間制は、労働基準法の規定上可能だと思います(不可という根拠があればご教示願います)。甲事業場は甲事業場の協定、乙事業場は乙事業場の協定を締結することになりますので、甲事業場の仕事内容を知らない乙事業場で適切な協定が結べるのかな・・・という懸念はあります。また、届出はどのように書くんでしょうね。乙事業場は、甲・乙事業場の労働時間を通算した数字で届け出ることになるんでしょうか?

4.甲事業場がフレックスタイム制を導入していた場合。

たとえば、甲事業場が精算期間の総労働時間を、法定労働時間(週40時間)ピッタリで設定したフレックスタイム制を導入していたとしたらどうでしょうか?

 フレックスタイム制とは、始業・終業時刻を労働者の決定にゆだねることで導入することができる制度です。労働者の決定にゆだねるわけですから、どの日に何時間働くか決まっていません。

 ただ、甲事業場が法定労働時間(週40時間)ピッタリで設定しているケースだと話は単純で、新たに契約する乙事業場の労働が「いつ」「何時間」であろうと、36協定の締結・届出をしなければならないと考えられます。

 では、甲事業場が、法定労働時間(週40時間)を下回る時間のフレックスタイム制を導入していたらどうなるでしょうか?

 このケースは、ガイドラインQ&Aの事例(4)と関係が深いので、そちらで確認することにします(基本的に「時の流れに従って計算」原則にもとづき判断するようです)。

5.甲事業場がみなし労働時間制を導入していた場合。

みなし労働時間制には、「事業場外」「裁量労働時間制」等があります。法律の定めにより、1日の労働時間としてみなす労働時間を設定することになっているので、新たに契約をする乙事業場は、みなされた労働時間とあわせた労働時間で36協定の締結・届出や割増賃金の支払の有無を判断すれば良いと思われます。

まとめ

以上、「新たに契約するパターン」について確認しました。

 新たに契約するパターンでは、後から契約する事業主が、「以前からある労働契約上の労働時間」と「これから契約する労働契約上の労働時間」を通算して、36協定の締結・届出や割増賃金の支払の判断をすることになります。

 たとえば、最初に契約していた甲事業場の「労働契約上の労働時間」が法定労働時間内に収まっているなら、契約通りに働かせた場合に「時間外労働に対する割増賃金」は発生しません。

 他社での就労実態は、副業・兼業が一般的でないときは、それほど意識する必要はなかったかも知れませんが、これからはキチンと確認する必要があります。


通常は、当該労働者と時間的に後から労働契約を締結した事業主と解すべきであろう。けだし、後で契約を締結した事業主は、契約の締結に当たって、その労働者が他の事業場でしていることを確認したうえで契約を締結すべきであるからである。
(労働基準法(コンメンタール) 厚生労働省労働基準局編 P530)

 新卒採用の場合でも、学生時代におこなっていたアルバイトを継続するケースがあるかも知れません。新卒採用した会社が「新たに契約する事業場」になるケースだってあると思われます。

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