副業・兼業と就業時間 徹底チェック!【甲乙双方で時間外労働を命じた場合】(7)



 今日は、ガイドラインQ&A最後の実例(4)を確認していきましょう。



さっそくガイドラインの例を確認してみましょう。

(4) 甲事業主と「所定労働時間3時間」という労働契約を締結している労働者が、新たに乙事業主と、甲事業場における所定労働日と同一の日について、「所定労働時間3時間」という労働契約を締結し、甲事業場で5時間労働して、その後乙事業場で4時間労働した場合。

 甲・乙双方の会社の所定労働時間は法定労働時間内で、かつ、甲・乙双方の会社が時間外労働を命じたとき、時間的に後から所定時間外労働を命じる乙会社の時間外労働が、法定労働時間を超えてしまうというケースです。

(答)
  1. 労働者が甲事業場及び乙事業場で労働契約のとおり労働した場合、1日の労働時間は6時間となり、法定労働時間内の労働となります。
  2. ここで甲事業主が、労働時間を2時間延長した場合、甲事業場での労働が終了した時点では、乙事業場での所定労働時間も含めた当該労働者の1日の労働時間は法定労働時間内であり、甲事業場は割増賃金の支払等の義務を負いません。
  3. その後乙事業場で労働時間を延長した場合は法定労働時間外労働となるため、乙事業場では時間外労働に関する労使協定の締結・届出がなければ当該労働者を労働させることはできず、当該延長した1時間について乙事業主は割増賃金の支払義務を負います。



 (答)を見ると、時間外労働の場合は、「労働時間の計算は時の流れに従って計算原則」にもとづき労働時間を合計していき、法定労働時間を超える時点で使用する事業主に36協定の締結・届出義務と割増賃金の支払義務があることになるようですね。

 < 確認事項 >

 1.乙事業場の労働が、甲事業場の労働の前にあるケース

  事例(4)の場合で、乙事業場の時間外労働「乙1時間」を、甲事業場の始業前におこなったとしたらどうでしょうか?



  判断の流れを丁寧に書くと、次のようになるでしょう。


  1.  1日の甲・乙の所定労働時間の合計は法定時間を超えていないので、この時点では、甲・乙共に36協定の締結・届出義務や時間外割増賃金の支払い義務はない。
  2.  「時間の流れに従って計算」した場合、まず乙事業主は1時間の所定時間外労働を行わせることになるが、この時点では、労働契約上の労働時間6時間と所定労働時間1時間を合計して7時間となり、法定労働時間を超えないため、乙1時間に対して36協定の締結・届出義務や時間外割増賃金の支払い義務はない。
  3.  次に、甲事業主が所定労働時間(労働契約上の労働時間)として3時間の労働を命じることになる。この所定労働時間は、法定内労働時間で設定した時間であるので、36協定の締結・届出義務や時間外割増賃金の支払い義務はない。
  4.  続いて、甲事業主が所定労働時間以外の労働を2時間命じることになるが、そのうち前半1時間を終了した時点で、甲・乙事業場での実労働時間5時間と乙事業場の所定労働時間3時間を合計して8時間になる。法定内労働時間内であるため、この前半1時間については、36協定の締結・届出義務や時間外割増賃金の支払い義務はない。
  5.  甲事業場での後半1時間については、命じる時点で、甲・乙事業場の実労働時間と乙事業場で予定されている所定労働時間を合計して法定労働時間(8時間)を超える労働を甲事業主が命じることになるため、甲事業主には、36協定の締結・届出義務が生じる。
  6.  最後に、乙事業場で「労働契約上の労働時間」である3時間の労働をおこなった時点で、実労働時間が法定労働時間(8時間)を超えることが確定するので、甲事業主に、1時間分の時間外割増賃金の支払い義務が生じる。


  ということになります。ほんと、大変ですね。

 2.「労働契約上の労働時間」と「実労働時間」

  何度も書いていることですが、時間外割増賃金を支払うかどうかは、実労働時間で決まります。



  たとえば、図のように、最終的に乙事業所での労働が所定労働時間より1時間短かった場合は、この日の労働時間は8時間となります。法定内労働時間内であるため、時間外割増賃金の支払い義務は生じません。

3.労働契約上の労働時間が、入り混じっている場合。

時間の流れに従って計算する原則に従って判断しますので、労働契約上の労働時間が入り混じっている場合でも考え方は同じです。


 図のように、所定労働時間+実労働時間の合計が8時間を超える時点において労働者を使用する使用者(甲事業主)に36協定の締結・届出義務と割増賃金の支払義務が生じます。

 法定労働時間ないで締結した「労働契約上の労働時間(たとえば、最後の乙1時間」について、割増賃金の支払い義務が発生するわけではないことに注意が必要です。

まとめ

これまで、「副業・兼業の促進に関するガイドラインQ&A」について、さらにくわしくみてきました。

 所定労働時間(労働契約上の労働時間)について確認したあと、実労働時間について確認するという2段階でチェックするという、とても特徴的な取扱です。

 ガイドラインQ&Aの事例は4つで終了ですが、まだ少し気になるポイントがいくつか残っていますので、さらに別の「重箱のスミ」をつっつくことにします。

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