【労働契約について】ゴールデンウィークに整理してみた(労働基準法と労働契約法)



 このブログは、重箱のスミをつっつくようなコトをザックリと書くブログです。
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 私はこーゆーブログを書いていますので、いろいろな質問を受ける機会が結構多いのですが、質問されているポイントに違和感を感じるというか、もうすこし視野を広く持った方がいいんじゃないかな・・・と感じることがあります。今回のお話は、この「感じ」に関するお話です。いつもザックリと書いてますが、今回はいつも以上にザックリとしたテーマですよ(^O^)/。

 まずは、具体的でシンプルな例をご紹介いたしましょう。たとえば、会社の人事・労務担当者から次のような質問を受けたばあい、みなさんならどう答えますか?

<シンプルな質問の例>
 「休日」を振り替えることができますか? 当社は、就業規則で「休日は土曜日、日曜日とする」と規定しているのですが、事情により、その「休日」に出勤する必要があるのです。

 とてもシンプルな質問ですね。質問がシンプルなので、答えだって、とてもシンプルです。

<シンプルな回答の例>
 御社では、就業規則で「休日は土曜日、日曜日とする」とお決めになっているのですね。だとすれば、御社がお決めになったとおり、「休日は土曜日、日曜日とする」必要があります。御社で休日を振り替えることは「できません」

 以上、おわり!。一件落着!!。いやぁ、我ながら明快な回答がビシィ!っと決まったなぁ・・・などと思っていると、意外にも質問者は納得がいかないようです。

<納得いかない質問者の例>
 いやいや、そういうことではないのです。法律では(労働基準法では)どうなっているのか聞いているのです。

  回答した時、その根拠を確認されることは良くあることです。「できるビジネスパーソン」なら、当然の行動ですね。では、根拠を示してみましょう。

<回答の根拠の例>
労働基準法第2条 第2項
○2 労働者及び使用者は、労働協約、就業規則及び労働契約を遵守し、誠実に各々その義務を履行しなければならない。

 書いてあるとおりです。説明の必要ないですね? 以上、おわり!。一件落着!!。そのものズバリ!の根拠を示すことができました・・・などと思っていると、質問者はますます納得いかない様子です。

<ますます納得いかない質問者の例>
 いやいや、いやいや。そういうことではないのです。 
 では、こういう風に質問しなおせばどうでしょう? 就業規則に「休日は土曜日、日曜日とする。ただし、業務の都合により、会社は休日を事前に振り替えることができる」と書いてあったらどうでしょう。振り替えできますよね? 振り替えできるはずだ。インターネットに書いてありましたよ。労働基準法に「休日を振り替えてはいけない・・・という規定はない」って。 
 もちろん、現在、我が社の就業規則に「休日の振り替え規定」はありませんが、「就業規則は会社が作るモノ」ですし、「労働者代表の意見を聞けば良いだけで、かならずしも同意の必要がない」のですから、なんとでもなるでしょう?

 やはり、この質問者は相当に出来るビジネスパーソンのようです。事前に全部調べた上で、念のために確認しているのですね。おかげで、質問に感じる「違和感の正体」が明らかになってきました。

 ひとことで言えば、この質問者は「労働契約を軽く考えすぎている」ように思います。おまけに、労働基準法第89条、第90条を読み誤っているのではないか・・・と感じるのです。

 具体的に、労働基準法の第89条と第90条を確認してみましょう。

第九章 就業規則
(作成及び届出の義務)
第八十九条 常時十人以上の労働者を使用する使用者は、次に掲げる事項について就業規則を作成し、行政官庁に届け出なければならない。(以下略)

(作成の手続)
第九十条 使用者は、就業規則の作成又は変更について、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者の意見を聴かなければならない。
○2 使用者は、前条の規定により届出をなすについて、前項の意見を記した書面を添付しなければならない。

 第89条は結構長い条文なので、後半をバッサリと省略しました。この部分について、「平成22年版 労働基準法 下巻(労働法コンメンタールNo.3) 」 では、さらに長々とした解説がついていますが、今回のお話はザックリとしたお話ですから、注目しているのはソコではないのです。条文の前のカッコ書きに注目してみてください。「()」で囲まれた文章は、その条文の「見出し」です。

 もう、おわかりでしょう。第89条は「作成及び届出の義務」で、第90条は「作成の手続」です。さきほど、「質問者は、労働基準法第89条、第90条を読み誤っているのではないか」と感じたポイントはここです。「就業規則は会社が作るモノ」というのは「作成及び届出の義務」に関する規定であり、「労働者代表の意見を聞けば良いだけで、かならずしも同意の必要がない」というのは「作成の手続」に関する規定です。

 つまり、「作成及び届出」の義務を果たしているかどうか、「作成の手続」をどうしなければならないか・・・といったコトに関する条文であって、内容が適正か? 書いたことが有効か? 会社がどうにでもできるものかどうか? ・・・について規定されている条文ではありません(そうですよね? ちがいますか?)。

 では、内容が適正か? 書いたことが有効か? 会社がどうにでもできるものかどうか? ・・・といったコトはナニで決まるのかというと、それは「労働契約法」に規定があります。イッキに確認してみましょう。

< 労働契約法 >
(労働契約の内容の変更)
第八条 労働者及び使用者は、その合意により、労働契約の内容である労働条件を変更することができる。 
(就業規則による労働契約の内容の変更)
第九条 使用者は、労働者と合意することなく、就業規則を変更することにより、労働者の不利益に労働契約の内容である労働条件を変更することはできない。ただし、次条の場合は、この限りでない。
第十条 使用者が就業規則の変更により労働条件を変更する場合において、変更後の就業規則を労働者に周知させ、かつ、就業規則の変更が、労働者の受ける不利益の程度、労働条件の変更の必要性、変更後の就業規則の内容の相当性、労働組合等との交渉の状況その他の就業規則の変更に係る事情に照らして合理的なものであるときは、労働契約の内容である労働条件は、当該変更後の就業規則に定めるところによるものとする。ただし、労働契約において、労働者及び使用者が就業規則の変更によっては変更されない労働条件として合意していた部分については、第十二条に該当する場合を除き、この限りでない。 
・・・第11条省略・・・
 (就業規則違反の労働契約)
第十二条 就業規則で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分については、無効とする。この場合において、無効となった部分は、就業規則で定める基準による
結局、就業規則の変更内容が有効であるためには、次の3つのいずれかに該当する必要があるようです。
  1.  個々の労働者と合意している。
  2. 労働者の「不利益でない内容」に変更する。
  3. 「変更後の就業規則を労働者に周知させ、かつ、就業規則の変更が、労働者の受ける不利益の程度、労働条件の変更の必要性、変更後の就業規則の内容の相当性、労働組合等との交渉の状況その他の就業規則の変更に係る事情に照らして合理的なものである」という条件を満たしている。

 ここからは、カンタンに3つのパターンについて確認しましょう。

 1番目の「合意」については説明不要ですね。「休日を振り替えて良いですか?」「良いですよ」という労使の合意があれば、振り替えてもOKです(すごくアタリマエです)。

 2番めの「不利益でない内容」については、どうでしょう。「休日を振り替えること」は、労働者にとって不利益なんでしょうか? どうでしょうか? 職場や仕事の内容などにより、判断が左右されるような気がします。ちなみに、「厚生労働省労働基準局」は、つぎのように解釈しています。

(休日の特定について)
1 法第三十五条は必ずしも休日を特定すべきことを要求していないが、特定することがまた法の趣旨に沿うものである(以下略 )昭和23年5月5日 基発682号、昭和63年3月14日 基発150号)  

 ズバリ!、「厚生労働省労働基準局」は「休日を振り替えること(休日を特定しないこと)」は、労働者にとって「不利益」だと考えているようですね。したがって、この考えでは、労働契約法にもとづいて、結局、合意なくして振り替えはできない・・・というコトになると思うんですがどうでしょう。

 3番めは、人事・労務担当者であれば「この考え方見たことあるな」と、気づくのではでしょうか。第四銀行事件とか、秋北バス事件とかのアレですね。「合理的かどうか」というのは、最終的には個々の事情について裁判所が判断することになります。

 ということで、視点をかえれば、今回の質問の例で「会社の人事・労務担当者が、休日振り替えを行えるようにする」ためには、次の3つのいずれかの方法を考える必要があります。

  1. 休日を振り替えることについて、労使が合意する。
  2. 労働者にとって不利益でないように振り替える規定にする。
  3. 労働者に不利益であっても、振り替えることが合理的であるようにする。

 では、どうするか・・・というのは、人事・労務担当者の「腕の見せどころ」です。いろいろと方法はあると思います。1~3どれかにすべき・・・ということでもないワケですから、「合意をもらえる労働者とは合意する。もらえない労働者には、個別に2番か3番の方法(条件)を検討して振り替えるようにする。いずれの方法もとれない労働者の休日は振り替えないようにする」といった対応も考えられるワケです。

 こういった問題に直面したとき、現場・現状に合わせてキチンと対応できるのが、真の出来るビジネスパーソンといえるでしょう。ドコかのダレかに出来るかどうか聞いて、そのとおりにするなんて、ドコのダレにでも出来るコトではないですか?
(個人の感想・意見です。いちおう念の為)

 以上、よくある違和感について、なんとなぁーく整理してみました。

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